
今回紹介するのは駒形の『蕎上人(そばしょうにん)』。じつはコチラ、蕎麦打ちのレジェンドとして知られる片倉康雄氏の直系のお弟子さんの店なのです。
片岡氏は現代の蕎麦打ちのスタンダードとなっている「手打ち」「細切り」「変わり蕎麦」「自家製粉」を確立した、戦後の蕎麦界の第一人者的存在。とりわけ機械打ちが主流だった時代に手打ち蕎麦を広めた事で知られています。栃木県足利市にある氏の店『一茶庵本店』には全国各地から蕎麦職人が訪れ学び、数多くの門弟を輩出しています。
そんな片倉氏の薫陶を深く受け継いだのが弟子の平沼孝之氏で当初は『浅草一茶庵』として1989年に開店し後に店名を『蕎上人』に改める。

老舗らしく落ち着いた店内。目に留まるのが一枚ものの木から作られた立派なテーブル。流れるような木目や艶のある表面。なんでも栗の古樹を使っているそうだ。

食器には“一茶庵”と刻まれており、確かに片倉康雄氏から受け継がれたDNAを感じる事ができた。
『蕎上人』で注文したもの
・ビール ¥770
・紅梅くらげ(つきだし)
・そば焼みそ ¥660
・五色そば ¥2200
・ビール
・紅梅くらげ

ビールはエビスと赤星があり後者をチョイス。

つきだしに「紅梅くらげ」が付いてきます。くらげのコリコリ感、とびっこのプチプチ感&塩気、梅肉の酸味感。かなり美味しくてビックリ!
量は少ないですがチビチビとつまんでビールが進みますね。
そば焼みそ

しゃもじに盛り付けされた「そば焼みそ」。

食べる前は味噌のねっとりした食感なのかな、と予想していたのですが良い意味で裏切られました。
火で味噌の水分が飛ばされておりパリッとしたクランチーな食感まるでスナック菓子のようです。中には蕎麦の実が仕込んでありナッツのようなカリカリ感を体現。
味噌らしいマッタリとした風味と塩気、刻んだネギの辛味と最高にビールに合いますね。
五色そば

店内の壁には本日のそばのラインナップが札掛けされていた。一茶庵系統らしい変わりそばも多い。
「五色そば」ならばうどん以外の全種を食べる事ができる。

蕎麦が到着じつに映えるビジュアルだ。色味や形状も千差万別で蕎麦それぞれに個性があるのが面白い。
『蕎上人』では国産最上級の玄そばを100%使用し石臼で自家製粉している。提供される蕎麦はいずれも「二八」以上の蕎麦の配合となっている。


まずは「田舎」から。太くゴワゴワとした形状でありまるで「武蔵野うどん」のよう、癖っ毛のように少々収まりが悪いのはご愛嬌だ(笑)
咀嚼するとザラついた舌ざわりで中から新蕎麦の野性味あふれるフレッシュかつ清涼感に富んだ風味がフッと喉の奥から鼻孔へと抜けていく。


続いて「せいろ」。切りムラのない端正な佇まいで先ほどのワイルドな「田舎」と好対照。
表面はザラリと摩擦係数高めで舌を擦ってくる。咀嚼するとニチッとした粘りが微かにあり甘味と香りバランスよく感じる事ができた。


続いて「けしきり」。こちらは幅広い扁平な形状の蕎麦だ。ケシの実がオタマジャクシの卵のように蕎麦に練りこまれている。
ツルリと滑らかな蕎麦肌で口の中で胡麻や長時間焙煎したナッツのような香ばしさと甘さが感じられる。


次は「茶きり」、翡翠のような色味がなんとも美しい。茶を練りこんだ影響かややモッチリとした弾力感がありつつ、カテキンのほのかなビター感と清々しい爽やかな風味が共存。


最後は「ゆずきり」。柚子皮の柑橘類特有の清涼感と刺激が入り混じった風味。すすった後もしばらく喉に留まり続ける爽やかな残り香の余韻が素晴らしい。


塩味(えんみ)こそ程々だが鰹をギュッと凝縮させたような風味豊かな濃ゆいツユ。いかにも東京の蕎麦らしい建付けのツユだ。

薬味は白葱と山葵、大根おろし。十二単をまとった女性のの小皿が面白い。

蕎麦湯は薄め。ただし著者がこの日一番乗りの客だったので蕎麦の茹で汁が十分に出きっていないタイミングだったせいであるかも。
あとがき
以上、駒形『蕎上人』を堪能してきました!
片倉康雄氏の『一茶庵』系譜の変わり蕎麦やレベルの高い蕎麦前に大満足。この日はパスしましたが日本酒も豊富に取り揃えているらしく、少し長居して蕎麦酒を楽しむのも良さそうだ。
ぜひお試しを。
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お店の基本情報
基本情報
- 店名:蕎上人(そばしょうにん)
- 住所:東京都台東区駒形2-7-3
- 電話番号:03-3841-7856
- アクセス:
- 都営浅草線「浅草」駅 A2a(またはA2b)出口から徒歩1〜2分
- 銀座線・東武伊勢崎線「浅草」駅から徒歩5分ほど
営業時間・定休日
- 昼:11:30〜14:30(L.O.14:00)
- 夜:17:00〜20:30(L.O.20:30)
- 定休日:月曜日・第2日曜・第4日曜
- 備考:売り切れ次第閉店となる場合あり
『蕎上人』への行き方

都営浅草線の浅草駅A2a出口より下車。

目の前の横断歩道を渡り反対側の道路へ。道路沿いに『蕎上人』があります。
駅からの所要時間は徒歩1~2分程度です。

