
今回紹介するのは2025年8月、虎ノ門ヒルズビジネスタワーにオープンした『すし処 優勝』。
経営母体は石川県金沢市で高級鮮魚卸と飲食業(『鮨やしち』、『立喰い鮨優勝』、『居酒屋はちなな』)を展開する株式会社八七産業。
鮮魚卸の仕入れルートを活かした加賀・能登の海の幸を使った料理が売りで、系列の『居酒屋はちなな』が北陸版のミシュランガイドに掲載されるなど今勢いのあるグループが東京に進出してきました!
虎ノ門ヒルズ内というこれ以上ない立地にありながら、特に北陸三県の海の幸に特化した鮨コースが15000円と比較的お手頃。都内の美食家達の間で既に話題となっているのです!予約が取りやすい今のうちに取り急ぎ訪問してみました。
店内はL字型の白木のカウンター席8席で大将の手さばきを間近で見ることができます。金沢にほど近い河北郡のご出身だという大将は物腰柔らかで落ち着いた接客。ビジネス上の接待などにも良さそうな雰囲気でした。
『すし処 優勝』で注文したもの
・季節のおまかせコース ¥13200(※ドリンク別)
テーブルチェックでの完全事前予約制、電話予約は受けてないようです。テーブルチェックで予約時にクレジットカード情報の入力が必要です。
なおボトルは1本5000円で持ち込み可能だそうです。
能登の岩もずく

コースの前半戦はつまみが出てきます。
最初に登場したのは白波立つ荒くて冷たい北陸の海水が育んだ「岩もずく」。輪島などでは海女さんが手摘みする事でも有名な食材ですね。

一般的な「もずく」のやわやわとした食感と異なり、繊維がしっかりしててポリポリと芯の通った独特な歯ごたえがあります。
こざっぱりとした酢の酸味感とも相性がよいですね。
すっぽんのスープ

驚いたのは「すっぽんのスープ」。鮨屋で出てくるとは予想だにしてませんでした。

珍味感はなく奇をてらわない角の立たない上品な味付けです。トロトロの玉子が美味。
スルメイカのゲソ

弾力感のあるゲソ。噛みしめると塩気ともなう濃いイカの風味、日本酒に大変よく合いますね。
よく見ると欠けた部分に金継ぎされた器。何気に金沢らしさを感じてしまいます(金箔は江戸時代から続く金沢市の伝統工芸品。じつに全国シェアの99%以上を占めている事で有名ですね)。
ボタンエビとカツオ

カツオの方は熟成させてあるのか、身が締まっているというよりホワッと滑らかで柔らかい感じ。
訪問は9月中旬なので時期的には戻りガツオの少し前位でしょうか?

とても肉厚な「ボタンエビ」。臼歯で噛むとブリンと弾ける感じ、強い甘味も印象的だ。
大将曰くボタンエビって「旬だから身が大きい」というものではなく、数年間回遊していた大きな個体が通年で網にかかったり、かからなかったりするシロモノらしい。へぇ~ひとつ勉強になりました!

黄色に裏地が緑の小皿、色味からして九谷焼っぽい気がします。使っている皿も一つ一つに品があります。
若狭・美浜の鰻

鰻の名産地として知られる福井県の若狭地方産の鰻。白焼きになってました。

焼き方はいわゆる関東風の全体が柔らかい「蒸し焼き」ではなく、関西風の表面をパリッとさせた「地焼き」。金沢も鰻は西日本側の文化ですからね。
香ばしい皮目にほんのりとした塩気、鰻の甘くてジューシー脂に舌鼓。
アオリイカ

ここから握りゾーンに突入します。シャリは白シャリでシャープな酸味があり米の粒立ちがくっきり感じられる明瞭度高めな仕上がりに感じます。
大将が丁寧に正確無比に格子状の隠し包丁を入れた「アオリイカ」。実に鮮やかな手仕事でまるでボッテガ・ヴェネタのイントレチャートみたいだ(笑)
口に入れるとはらりと切れ目に沿ってほどけてネットリとした舌ざわりと共にイカの甘い味が広がっていく。
白えび

富山湾の白えび。小さな海老をひとかたまりのネタとして提供されます。しっとりとした柔らかさと品のある甘味。
甘えび

個人的にも大好物の「甘えび」。

こちらは肉厚で表面のねっとり感と弾力感を兼ね備えています。芳醇な甘味が最高!
このクオリティなら甘えびが卵を抱えだす冬場にも再訪したくなりますね。
アラ

スズキ目の魚「アラ」。こちらも格子状の隠し包丁が美しい。

濃厚な甘味とうま味、少しコリコリとした引き締まった食感。
魚の風味のノイズにならない優しい醤油の加減も絶妙だ。
紅ズワイ

本ズワイガニのシーズンにはまだ少し早いので、出てきたのは紅ズワイでした。
カニ身をほぐして手巻きに。さっぱりとした甘味と筋肉質でぷっくりとした食感。贅沢にもたっぷりと身が入っていて満足度も高いですね。
雲丹いくら小丼

ともに北海道産という雲丹といくら。

当然ですが雲丹は臭味の類は一切ありません。雲丹の甘味、磯の風味とイクラの塩気が口の中でぶつかって混然一体となります。
何気に上にちらした海苔の香りも良いですね。
秋刀魚

今年豊漁だという旬の秋刀魚。こうやって鮨にすると改めて今年の秋刀魚がよく肥えているのが分かりますね。
この日は大田市場でサンマフライを食べているので二回目の秋刀魚です(笑)


…やっぱり分厚い(笑)
強い甘味とうま味、ジューシーさの三要素が素晴らしい。上に乗せ柚子胡椒の辛味にも負けないほどに脂が乗っており素晴らしかったです。
ねぎとろ

赤身のさっぱり感に脂のねっとり感、甘味が加わり口内の温度でとろけそうなメルティな食感。
パリッとした海苔の食感と抑揚が効いており印象的な一品だ。
あおさの味噌汁

いよいよコース料理もクライマックスへ。
優しい味噌のマイルド感とあおさの磯の風味が秀逸な味噌汁でクールダウン。
玉子とあがり

なんと、甘えびを練りこんだ玉子!
東京だと魚の白身を練りこんでカステラ調に仕上げた鮨屋はありがちですが、甘えびって珍しい気がします。北陸らしさが出ていて良いですね。

パウンドケーキのようなフワフワとした食感と甘えび由来の強い甘味、玉子のまろやかな風味。玉子の中から甘えびの味がしてくるのが不思議な一品。

「あがり」でさっぱりと口中を洗い流す。ごちそうさまでした!
いただいたお酒類
・ハートランド(小瓶)
・五凛 純米酒
・勝駒 純米酒
・五郎島金時 芋(水割り)




石川県産のサツマイモ「五郎島金時」を使った芋焼酎。
五郎島金時は加賀野菜のひとつで、五郎島金時のスイートポテトは金沢でメジャーな銘菓のひとつですね。

…んーでも、石川県に芋焼酎の蔵元ってありましたっけ?
ラベルを見てみると成るほど、醸造自体は芋焼酎の本場・鹿児島県で行っているんですね(笑)
あとがき
以上、今話題の『すし処 優勝』を楽しんできました!
コース料金のほかビール小瓶と日本酒二合、焼酎一杯飲み、甘えびの握りを追加して19000円ほど。北陸三県に特化した鮨って何気に珍しい気がしますし、港区の虎ノ門ヒルズというロケーションを考えればコスパは良好だと思います。北陸に縁のある著者目線でも満足のいく訪問でした。
個人的には希望としては金沢の郷土食であり、個人的に好物の「かぶら寿司」も是非コースに取り入れて欲しいですね。是非お試しあれ!
メニュー表のギャラリー



お店の基本情報
店舗概要
- 店名:すし処 優勝(寿司処 優勝 / Sushi Yusho)
- 運営会社:株式会社八七産業(魚の卸売業を手がける)
- 監修:ミシュラン二つ星「すし処 めくみ」の山口尚享(やまぐち ひさのぶ)大将
- 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 3F
- アクセス:
- 虎ノ門ヒルズ駅 徒歩数分(約200-250m)
- 虎ノ門駅、霞ケ関駅などからもアクセス可能
営業情報・特徴
- オープン日:2025年8月1日
- 営業時間:
- ランチ:12:00~14:15
- ディナー:17:45~20:00、20:00~22:15 の2部制
- 定休日:日曜日+その他不定休あり
メニュー・価格等
- コース形態:「季節のおまかせコース」がメイン
- 主なコース内容:おつまみ+握り(約10貫前後)
席数・内装・雰囲気ほか
- 席数:8席のみ
- 予約制:完全予約制で、ネット予約が可能。
- 支払い方法:クレジットカード可。現金も可。
『すし処 優勝』への行き方

虎ノ門ヒルズ駅、霞ヶ関駅、虎ノ門駅など各駅から虎ノ門ヒルズへ。

ビジネスタワーの3Fに店があります。タワーの館内のテナントにはファミリーマートのATMもあるので便利です。