
本日は神保町の個人的なお気に入り店『手打蕎麦切 松翁(まつおう)』。食べログにおいて蕎麦百名店に5度に渡り選出される名店。
元々はサラリーマンで蕎麦屋で修業後に独立した小野寺松夫氏の手に寄って1981年に開店。店主の“夫”の文字を“翁”に置き換えて店名の「松翁」に。実は美食家としても知られる歴史小説家である故 池波正太郎氏が足繫く通っていた店でもある。
また『松翁』自体が名店であるに留まらず、楽坂『大川や』、根津『鷹匠』、本郷三丁目『森の』、岩本町『手打ち蕎麦切り 匠』など優秀な蕎麦職人を数多く輩出している。
なお『手打ち蕎麦切り 匠』についても以前レビューしているので是非ご一読いただきたい。

夕方の開店直後に訪問してみると特に並びもなく簡単に一番乗り。客の年齢層はやや高めで蕎麦だけでなく蕎麦前と日本酒も一緒に楽しんでいる方が大半でした。

『松翁』で注文したもの
・つきだし
・穴子の煮凍り ¥950
・二色もり ¥1100
・貴 特別純米 ¥1250

つきだし

・じゃがいものポタージュ
・和栗
・ポテトサラダ
・南瓜
・枝豆
ディナー時に着席すると女将さま(?)から「お飲みになりますか?」と聞かれます。飲む旨をお伝えするとつきだしが運ばれてくる仕組みです。

「じゃがいものポタージュ」。ひんやりと冷たくスープの中にトロトロとしたジャガイモの繊維質を感じる。じゃがいもの澱粉の甘味と塩気のせめぎ合いが実に絶妙な塩梅となっている。

訪問したのは9月初旬。暦の上では秋だが近年では残暑どころか9月に入っても都内は35℃超えの酷暑続き、秋の気候と呼べる時季がどんどん短くなっている気がする。
そんな中でも9月早々に「和栗」を出して秋の旬を演出してくれている心意気が素敵。甘味はなく栗の素朴な風味と苦味がストレートに感じられる味わい。

「ポテトサラダ」。さっぱりとしたマヨネーズと玉ねぎの辛味成分で仕上げたどこか懐かしい味つけ。ポテサラのまったり感の中に玉ねぎのシャリシャリした食感が心地よい。

「南瓜」と「枝豆」。前者はあっさりとした煮付になっていました。
穴子の煮凍り

プルプルなゼリー質の煮凝りに無数の穴子が詰まった一品。


穴子が想像の4割増しで濃くて驚いた。口に入れると優しい出汁が下支えしつつ濃縮された穴子の風味がぶわっと広がっていく。日本酒にも合うし控えめに言って最高だ。
二色もり

『松翁』名物の二色もり。「生粉打ちの蕎麦」と「季節の変わり蕎麦」が付いてくる。この日の変わり蕎麦は世にも珍しい「トマト切り」でした。


まずは定番の「生粉打ち蕎麦」から。茨城県産常陸秋そば100%使用の自家製粉生粉を使用、ところどころポツポツと黒い蕎麦殻が見える。
スルッと滑らかな蕎麦肌に噛むとニチッとした歯ごたえ。咀嚼すると蕎麦の甘味と清涼感が楽しめる。


続いて「トマト切り」、紅玉のような澄んだ色味が美しい。
舌に神経を集中させて食べたのだがトマトの酸味甘味は感じられず、それよりも蕎麦の実の甘味が勝っているように思えた。ひょっとすると著者の舌が拙いせいだったのかもしれない、蕎麦としては大変美味しかった。

著者が東京の蕎麦にハマるきっかけとなった松翁のツユ。
鰹節の名産地である枕崎産の本枯れ節に真昆布や椎茸を合わせてある。江戸前の蕎麦ツユらしくキリッと凛々しく濃厚ではあるもののカエシの塩分は控えめで、まるで濃縮還元されたような鰹の風味が濃い感じ。
相変わらず松翁のツユが美味しすぎる。

ある程度ピュアな蕎麦の味を楽しんだら白葱、山葵、大根おろし、胡麻といった薬味を適宜加えて味変。

最後はもちろん蕎麦湯で〆を。南部鉄器だろうか?非常に立派な鉄瓶で提供されます。
蕎麦ツユが濃いめなので蕎麦湯で割っても美味しいですね。蕎麦湯もドロドロ濃厚で美味でした。
あとがき
以上、『松翁』でした。この日はパスしましたが、「浦霞」「くどき上手」「飛露喜」「写楽」「鳳凰美田」「黒龍」「十四代」など日本酒のラインナップも豊富。
相変わらず蕎麦・蕎麦前・日本酒のバランスがよく最高の蕎麦屋だなと改めて認識しました。季節の旬の蕎麦きりや蕎麦前目当てにまた訪問したくなります。
ぜひお試しを
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お店の基本情報
営業時間
曜日 | 営業時間(目安) |
---|---|
月~金 | ランチ:11:30 ~ 14:00(または 15:30) ディナー:17:00 ~ 20:00 |
土 | ランチ:11:30 ~ 16:00 |
日・祝日 | 定休日(年末年始・お盆の休業あり、さらに市場の休市日にあたる水曜日に臨時休業の可能性あり) |
その他の営業関連情報
- 予約:予約可能。
- 席数:1階テーブル26席、2階テーブル12席 → 合計38席
- 支払い:現金のみクレジットカード・電子マネー・QR決済は不可
- 個室的利用:2階を貸切して個室のように活用可(要問い合わせ)
- 禁煙:店内は全面禁煙
- アクセス:神保町駅徒歩5〜6分、水道橋や御茶ノ水駅から徒歩約7〜8
『松翁』への行き方

JR御茶ノ水駅方面からの場合、明治大学駿河台キャンパスおよび山の上ホテルの裏手へ向かいます。

猿楽坂を下り神保町方面へ。


猿楽通りから1本入ったところに『松翁』があります。駅からの所要時間は徒歩約7~8分。
地下鉄神保町駅からも徒歩圏内です。