目黒区祐天寺といえば、もつ焼きの名店が数多い魅力的なエリアだ。

本サイトで先日紹介した北口の営業時間は3時間だけ。訪問ハードルが高い「忠弥」もそのひとつ。

本日紹介するのは南口の駒沢通り沿いに佇む「もつやき ばん」。
開店時刻である15時と同時に満席になる人気店だが実はこの店、現在日本全国で愛飲されるレモンサワーの誕生に1枚噛んでいるのだ。
そもそも「ばん」のルーツは昭和5年(1930)に創業者の小杉正氏が中目黒の実家を改装し居酒屋を開店した事に始まる。
この中目黒「ばん」で日本の飲食史に残るレモンサワーが誕生する。後述するが「とんび」などの人気メニューも評判となり「ばん」は大変な繁盛店となる。
しかし2004年、中目黒駅前の土地再開発のあおりを受けて元祖「ばん」は閉店を余儀なくされる。
そして翌2005年、元祖「ばん」の創業者・
小杉正氏の実弟が独立して祐天寺に開店したのがここで紹介する「もつやき ばん」。
…ちなみに2006年に五反田で創業し、
中目黒、三軒茶屋、下北沢、高田馬場、恵比寿などに展開する「もつ焼きばん」は、小杉正氏の義理のご子息が暖簾分けを受けて始めた系列ですね。
で注文したもの
・枝豆(お通し)
・レモンサワー ¥400
・とんび豆腐二本 ¥500
・レバ ¥100
・かしら ¥100
・フランス¥100
・しろ ¥100
・ほっけ ¥380
・地酒(大)¥580


レモンサワー

偉大なる元祖「ばん」が発明したレモンサワーを継ぐ一杯ここにあり。客が自らレモンを絞りハイサワーと一緒に焼酎を割るのが
元祖「ばん」式だ。
ばんといえばサワー!先代の兄がつけたネーミングです。
もつやきばん公式HPよりhttps://motsuyakiban.com/
のど越し良くすっきりした飲み物で、以前は焼酎の炭酸割りを酎炭、焼酎とハイボールで 酎ハイといっていたものを、先代の兄がつけたものがサワーの発祥です。 アルコール度数が高く、安価で酔えることから爆発的に人気がでました。
現代では実際にレモンを絞ったものを、
わざわざ「生絞りレモンサワー」と区別して呼ぶ事がありますが実は元々のレモンサワーの方が生絞りなんですよね。

我ながらイイ感じに絞れました!

生絞りゆえに種が少し入るのもご愛敬。
柑橘類特有のビター感と爽やかさが焼酎を飲みやすくしてくれるのを肌身に感じますね!
とんび豆腐二本

元祖「ばん」から長らく続く人気メニュー。
著者もこれが好きでいつも注文しちゃいます。
“とんび”とは“豚尾”のことでブタのしっぽの煮込み。「とんび豆腐」にすると中に絹ごし豆腐が入ります。

煮込まれて角が取れて丸っこい食感の豆腐。
不思議なことに「とんび豆腐」は辛いけど、
爽やかな酸味感もあって少しミネストローネぽいんですよね。今日も美味しいわ。

ブタの尻尾は少し小骨はありますが、コラーゲン質のトロトロ感があり最高!
もつ焼き

・レバ
・かしら
・フランス
・しろ
タレ塩は店の方が焼くの面倒だろうなと思い全てタレで統一して注文。この物価高の時代に100円均一、頭が下がります。

「レバー」は大ぶりものが3個で1串。
生感を残すもつ焼き屋が多い中、比較的ウェルダンな焼き上がりです。
表面はサックリ、咀嚼するとネットリと絡みつく舌ざわり。
タレは甘さの中にほんのりビター感がある大人の味わいです。

続いて首回りの部位「フランス」。
なぜフランスなのかはよく分かりません。
ちょっと話が脱線しますが、福岡県久留米市の焼鳥屋では腸の部位を「ダルム」と呼びます。
これは一説に久留米大学病院の関係者が焼鳥屋の腸の串を、医学用語になぞらえてドイツ語で「ダルム」と遊びで呼んだのが始まりと言われています。
「フランス」と「ダルム」似たようなノリでしょうかね?
ちょっと噛みこむ必要のある歯ごたえと弾力感が良いですね。

続いて王道の「かしら」。コリッとした食感とかみ締めるとジワッと湧きたつうま味。

最後は「シロ」。カリッと強めに焼いた部分とムチッとした伸縮感が入り混じった食感。
香ばしい焼き目の香りもよき。
ほっけ

半身ではありませんが肉厚です。

炭火で焼いてるので香ばしく、箸を入れるとホロホロと崩れる柔らかさも素晴らしい。
ほんのりとしたしょっぱさが酒によく合いますね。
あとがき
以上、「もつやき ばん」でした。
お隣のお客さんと肩肘がぶつかりそうな距離感のザ・大衆居酒屋ですが基本的に客層がよく「イイ大人」が多い感じ。変な絡み方をされる方は著者は見た事ありません。
基本的に他のお客さんに不干渉で黙々とそれぞれお酒を楽しんでる雰囲気です。
ふと思い返せばレモンサワーって
「強い焼酎をカジュアルにスッキリ飲める最適解」だ。
レモンサワーを入口にしてお酒の楽しみを知り、飲めるお酒の幅が広がった人って少なくない筈。日本の飲食業界に多大な影響を与えているのではないかと著者は思う。
もし元祖「ばん」が存在しない世界線ならば世の中からレモンサワーが消え、ひょっとすると飲酒人口も減っていたのではなかろうか。
偉大な発明を残してくれた「ばん」に思いをはせて訪問してみて欲しい。
お店の基本情報
店舗情報:もつやき ばん(祐天寺店)
- 住所:東京都目黒区祐天寺2-8-17
- 電話番号:050-5869-3577
- アクセス:東急東横線「祐天寺駅」から徒歩約5〜6分。改札を出て右へ進み、駒沢通りに突き当たったら右折。大きな赤提灯が目印です。
- 営業時間:15:00〜22:00(ラストオーダー 21:30)
- 定休日:なし(年中無休)
- 予算目安:1,000円〜1,999円(口コミでは2,000円〜2,999円程度)
- 支払い方法:現金のみ。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済は利用不可。
- サービス料・チャージ:なし(お通し代も不要)
「もつやきばん」への行き方

祐天寺駅を下車し南口へ

祐天寺駅通りを南下。

突き当りの駒沢通りを右折したら道沿いに店があります。祐天寺駅から徒歩5分ほど。